rep53-その契約リスク、見逃せば大きな代償に ― コンプライアンス軽視がもたらす危機とは

レポート

契約の確認不足がもたらす致命的な代償

プロジェクトは、多くの契約関係に基づいて成り立っております。

顧客との契約、ベンダーとの契約、協力会社との契約、ライセンス契約…。

これらの契約は、プロジェクトの権利義務関係を定め、円滑な運営を支える基盤でございます。

しかし、契約内容の確認が不十分だったり、関連する法規制への理解が不足していたりすると、「契約違反を指摘され、損害賠償を請求された」「ライセンス条件に違反してしまい、ソフトウェアが利用できなくなった」「法改正に気づかず、プロジェクト計画が根底から覆された」といった深刻な問題に発展する可能性がございます。

契約や法律に関する問題は、プロジェクトの遅延やコスト増だけでなく、企業の信用失墜や法的な紛争に繋がりかねない重大なリスクです。

本記事では、プロジェクトに潜む契約・法的リスクを明らかにし、なぜこれらの問題が発生するのか、その原因を探ります。

さらに、Vision Consultingが提唱する、法的リスクを事前に回避し、コンプライアンスを遵守しながらプロジェクトを成功に導くための実践的なアプローチについて解説いたします。

なぜ契約・法的トラブルは起こるのでしょうか?

プロジェクトにおいて契約や法律に関する問題が発生する背景には、以下のような要因が考えられます。

・契約内容の理解不足、確認漏れ: 契約書に記載されている条項(作業範囲、成果物、納期、支払い、保証、責任制限、解除条件、知的財産権など)を十分に理解・確認しないまま契約を締結してしまいます。

・契約書の曖昧さ: 権利義務関係、作業範囲、成果物の定義などが具体的に記述されておらず、解釈の余地が残っているため、後々トラブルになります。

・関連法規の知識不足: プロジェクトに関連する法律(下請法、個人情報保護法、著作権法、業法など)や業界規制に関する知識が不足しており、意図せず違反してしまいます。

・法務部門との連携不足: 契約書のレビューや法的リスクの相談について、法務部門との連携が取れていない、または連携が遅くなります。

・口約束や慣習への依存: 正式な契約書を取り交わさず、口約束や過去の慣習に基づいて取引を進めてしまい、問題発生時に証拠がございません。

・国際契約における課題: 海外の企業と取引する場合、準拠法や紛争解決手続き、言語、文化の違いなど、特有のリスクに対する理解・対応が不足しております。

・契約管理体制の不備: 締結した契約書が適切に保管・管理されておらず、必要な時に参照できない、または契約期間の更新漏れなどが発生いたします。

・コンプライアンス意識の欠如: 組織全体またはプロジェクトメンバーのコンプライアンス(法令遵守)に対する意識が低くなっております。

・安易な雛形利用: インターネットなどで入手した契約書の雛形を、内容を十分に検討せずに利用してしまいます。

・交渉力不足: 相手方から提示された不利な契約条件に対して、十分に交渉できません。

 

契約・法的問題がもたらす深刻な影響

契約や法律に関する問題は、プロジェクトおよび企業全体に甚大な被害をもたらす可能性がございます。

・損害賠償請求: 契約違反や法令違反により、相手方や第三者から高額な損害賠償を請求されます。

・プロジェクトの中断、遅延: 契約上の紛争や行政処分などにより、プロジェクトの継続が困難になったり、大幅な遅延が発生したりいたします。

・コストの増大: 紛争解決のための弁護士費用、訴訟費用、和解金、追加の是正措置など、予期せぬコストが発生いたします。

・信用の失墜: 法令違反や契約トラブルが報道されたり、顧客からの信頼を失ったりして、企業のレピュテーション(評判)が著しく低下いたします。

・事業機会の損失: 契約問題により取引が停止されたり、行政処分により事業活動が制限されたりいたします。

・知的財産権の喪失: 契約不備により、自社で開発した技術やノウハウの権利を失う可能性がございます。

・刑事罰のリスク: 重大な法令違反の場合、関係者が刑事責任を問われる可能性もございます。

・社内リソースの浪費: 紛争対応に多くの時間と労力が割かれ、本来の業務に集中できなくなります。

 

Vision Consulting流「リーガルリスク・マネジメント」

Vision Consultingは、プロジェクトを法的リスクから守り、円滑な運営を実現するための、以下の統合的なアプローチを支援いたします。

1. 契約前の徹底的なリスク評価: 契約締結前に、契約内容、取引相手、プロジェクトの特性などを考慮し、潜在的な法的リスクを洗い出し、評価いたします。

2. 明確かつ網羅的な契約書の作成、レビュー: プロジェクトの実態に合わせて、権利義務、作業範囲、成果物、品質、納期、費用、責任、知財、解除、紛争解決などの条項を具体的に、かつ網羅的に規定いたします。法務部門や弁護士によるレビューを徹底いたします。

3. 関連法規、規制の遵守体制構築: プロジェクトに関連する国内外の法規制や業界ガイドラインを特定し、遵守状況を確認・維持するための体制とプロセスを構築いたします。

4. 法務部門との連携強化: プロジェクトの初期段階から法務部門を巻き込み、契約相談やリスクレビューを迅速に行える体制を整備いたします。必要に応じて、プロジェクト専任の法務担当者を置くことも検討いたします。

5. 契約管理システムの導入、活用: 契約書の作成、レビュー、承認、保管、期限管理などを効率的に行うための契約管理システム(CLM: Contract Lifecycle Management)の導入・活用を支援いたします。

6. コンプライアンス教育、啓発: プロジェクトメンバーや関係者に対して、契約や関連法規、コンプライアンスの重要性に関する教育・研修を定期的に実施し、意識向上を図ります。

7. 標準契約書、雛形の整備: よく利用する契約類型について、法務部門がレビュー済みの標準契約書や雛形を整備し、利用を促進いたします。

8. 紛争解決条項の戦略的検討: 万が一の紛争発生に備え、訴訟、仲裁、調停など、プロジェクトの特性や相手方に合わせた適切な紛争解決方法を契約に規定いたします。

9. 定期的な契約内容の見直し: 締結済みの契約についても、法改正やビジネス環境の変化に合わせて、定期的に内容を見直し、必要に応じて改定いたします。

10. 外部専門家(弁護士等)の効果的な活用: 複雑な法的問題や専門性の高い分野については、早期に外部の弁護士や専門家に相談し、適切なアドバイスを得ます。

 

事例紹介/筆者経験

ある海外企業との共同開発プロジェクトにおいて、当初、相手方から提示された契約書案には、知的財産権の帰属が曖昧な条項や、日本法では不利になり得る紛争解決条項が含まれていました。

Vision Consultingは、法務部門および国際契約に詳しい弁護士と連携し、契約リスクを徹底的に分析いたしました。

交渉を通じて、共同開発成果の権利帰属を明確化し、双方にとって公平な国際仲裁条項に変更することに成功いたしました。

もし当初の契約のまま進めていたら、将来的に深刻な権利侵害や紛争に発展していた可能性がございました。

契約締結はプロジェクトの入り口であり、ここでの法的リスク評価と適切な対応が、将来のトラブルを未然に防ぐ上で極めて重要でございます。

攻めのコンプライアンスへの展望

これからのプロジェクトマネジメントにおいては、単に法律を守るという「守りのコンプライアンス」だけでなく、法的な知識や契約戦略を駆使して、自社の権利を守り、ビジネス上の優位性を確保するという「攻めのコンプライアンス」の視点も重要になります。

例えば、知的財産権を戦略的に活用したり、有利な契約条件を引き出したりすることで、プロジェクトの価値を最大化することが可能でございます。

法務部門を単なるリスク管理部門としてではなく、ビジネスを推進するための戦略パートナーとして位置づけることが求められます。

検討手順

プロジェクトにおける契約・法的リスク管理を強化するための具体的なステップは以下の通りです。

1. リスク特定: プロジェクトに関連する契約類型(請負、準委任、売買、ライセンス等)と、適用されうる法規制をリストアップいたします。

2. 契約書レビュープロセスの確立: 契約書作成・審査の担当者、法務部門の関与タイミング、承認フローなどを明確にいたします。

3. チェックリスト作成: 契約書レビュー時に確認すべき主要な条項や法的リスクに関するチェックリストを作成いたします。

4. 法務相談窓口の設置: プロジェクトメンバーが気軽に法務部門に相談できる窓口を設置し、周知いたします。

5. 契約管理台帳の整備: 締結した契約書の基本情報(相手方、契約期間、主要条件など)を管理する台帳を作成・維持いたします。

6. コンプライアンス研修の実施: 定期的に契約や関連法規に関する研修を実施いたします。

7. 法改正情報の収集: 自社の事業に関連する法改正の動向を継続的に収集し、影響を評価する体制を構築いたします。

8. 標準契約書の整備: 頻繁に利用する契約については、標準書式を作成いたします。

9. 紛争発生時の対応フロー策定: 実際に紛争が発生した場合の対応手順、責任者、連絡体制などを事前に定めておきます。

10. 弁護士との連携: 必要に応じて顧問弁護士や専門分野に強い弁護士との連携体制を構築いたします。


 

おわりに

契約や法律に関する問題は、一度発生するとプロジェクトに甚大な損害を与えかねない、非常に重要なリスクでございます。

「契約書は難しい」「法律は専門外」と敬遠せず、プロジェクトの初期段階から法的リスクを意識し、適切な対応をとることが不可欠です。

Vision Consultingは、契約リスク評価、契約書作成・レビュー支援、コンプライアンス体制構築、契約管理プロセスの最適化などを通じて、貴社のプロジェクトを法的トラブルから守り、健全な運営をサポートいたします。

明確な契約と法令遵守は、プロジェクト成功のための「守りの要」でございます。

法的リスクへの備えに不安がある場合は、ぜひVision Consultingにご相談ください。

安心してプロジェクトを推進できる基盤を共に築きましょう。

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補足情報

関連サービス:リーガルコンサルティング、契約書作成・レビュー支援、コンプライアンス体制構築支援、契約管理システム(CLM)導入支援、知的財産コンサルティング、紛争解決支援

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